「わたしの金魚」


あたくし、たった100円でつられた金魚ですの。
お祭りで

「金魚すくい1回100円」

ってありますでしょ?あれですわ。
しかも、その時はあたくし以外に3匹も
別なのがおりましたから、
あたくしは25円の金魚ということです。
世の中には、ヒレの美しい金魚や、
目が飛び出ていらしたり、
頭の上に変なこぶを持っていらしたりする、
あたくしの何百倍もの価値のある金魚がおりますけど、
あたくしだって、
それくらいの価値はあると自負しておりますの。

あの日すくわれてから、1ヶ月。
今、水槽にいるのはあたくし一人だけ。
他の3匹はとうの昔にこの世から逃げてしまいましたわ。
そして、飼い主の可愛らしい女の子はいつもあたくしに
エサを与えてくれますし、話しかけてくださるの。
「おはよう」で始って「おやすみ」で終わりますのよ。
なんてステキなのかしら。
今ではエアポンプとろ過装置、
温度計と温度調節器までついてますの。
あたくしだけのために。
水草が人工なのは少し悲しいけれども、
腐る心配がないのは嬉しいことですわ。
同じお部屋で朝夜ともに、
お話も聞いて上げられるあたくしは、
飼い主にとって、ずいぶんと大切な存在ですのよ。
もうそろそろしたら、あたくしからも
声をかけようかとさえ思ってますの。
あら、金魚がしゃべれないだなんて誰が決めまして?
心が通じれば会話だってできるんですから。
ほら、今も現にこうして・・・


「って、この金魚は言ってると思うんだけどサ。
  どう思う?お母さん!ほら、見てよ見てよー!!」


END