「オトナ」


自分で言うのもなんですが、
私はそこら辺の人なんかより、
よっぽど“幸せ”な人間なんですよ。
家は、祖父母達の面倒を見るために同居しています。
私たちの夫婦と祖父母達は、
サザエさん一家顔負けの仲の良さです。
祖父母達は立派な人たちでしてね、
今の私がこうやって他人に自慢できるほど
幸せなのは、この人達が育ててくれたおかげですね。
妻は美人で器量がよく、料理も上手い。
大学時代の学年のマドンナでしてね、
あらゆるライバルを制して今に至るんですよ。
ははっ。あの時は若かったなぁ。
そんな妻との子供が、今私の隣にいるこの子です。
なかなか賢こそうな男の子でしょう?
夫婦円満、親孝行バッチリ、
子供は可愛い、仕事も安定した公務員。
いかがなもんです?


今日は日曜日ですからね、家族サービスということで
子供と遊んでやってるんです。
妻は久しぶりに美容院にいけると喜び、
祖父母達は歌舞伎観賞をするといって
朝から出かけていってるんですが、
夜は皆で外食をする予定。
それまでは息子とのコミュニケーションを
大切に過ごすことにしましょう。


「大きくなったら何になりたいんだ?」

「え?僕は大きくなっても僕だよね?」

「あはは。そうだね。そうだとも!
 でも、お父さんが聞いたのはそうじゃなくって、
 大人になったら叶えたい夢っていうか。
 将来何なりたいかっていう夢のコトだよ。」
 
「そういうことかぁ。
 うんっ僕は動物のお医者さんになりたいんだ!」
 
「そうかそうか。なかなか立派じゃないか!
 がんばれよ。大きくなったら自分の好きな事を
 仕事にして、綺麗な人と結婚をするんだぞ〜。
 そして毎日が楽しくて“幸せ”ってやつにするんだ。」
 
「うん!」

「それまで、お父さんがしっかりと
 お前は助けていってやるからな!」

「ありがとう!そうだ!
 お父さんは大きくなったら何になりたいの?」


「・・・。」


END