「似てない双子のお話」


人の住む世界を地上の世界と言うとします。
そうすると、
そのもっと上の上の空の世界を天界と言うとしましょう。
そこには、翼をもった人と似た者達が住んでいました。
地上の世界より、文明というものは遅れていましたが、
その分平和で、幸せそうな場所でした。

ある日、そこのとある小さな村で
二人の子供が生まれました。
ほぼ同じ時間に、同じ場所で彼らは生まれました。
彼らは、地上の人でいうのなら“双子”といいます。
生まれたばかりの彼らは、羽の色は違っていたけども、
同じような姿、形をしていました。

しかし、ゆっくりと時が経って気がついてみると。
彼らは全然似ていませんでした。
片方は羽の色が白でした。もう片方は黒でした。
白翼は優しい、こまめで無邪気な少年に育ちました。
瞳も金色、髪も金色、パチリと大きい目をしていました。
黒翼は冷たい、投げやりな大人びた少年に育ちました。
瞳も黒色、髪も黒色、キリリと鋭い目をしていました。
誰が見ても、双子には見えませんでした。

「・・・あれ?
 ボク、今何とろうとして立ったんだっけ?」
白翼の方が言いました。
「本棚の右端の、緑色の本を読もうとしたんだよ。」
黒翼の方が言いました。
白翼は、ポンと手をうつと
緑色の本を取りだして読み始めました。
黒翼はそれを、見届けた後
立ち上がり部屋を出ようとしました。
「待って・・・絵の具なら、この部屋にあるよ。」
白翼がそれを止めて言いました。
そして指さす先には絵の具道具の入った
青い袋が置いてあります。
黒翼は黙って、その絵の具を取りだして
絵を描き始めました。

ある日、とある小さな村で生まれた双子は
全然似ていませんでした。
しかしそれでも、彼らは双子です。
たとえ、全然似てなくとも、
双子という事実は変わりません。


END